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兵法に通達した人 沢庵宗彭 不動智神妙録より

通達の人はという時、ここでは兵法に通じた人、達人を意味しています。
刀を用いて人を殺さずとは、刀を使ってい人を殺しはしないのですけれども、
誰でも、達人の体得している道理を前にしては、自然に身も心もすくんでしまって、
死人のようになってしまうので、人を殺さねばならないことなどないのであります。

刀を用いて人を活かすとは、刀を使って人をあしらいながら、敵の動くままにさせて、
それを眺めるのも、思いのままにできるというのです。

殺すを要さば即ち殺し、活かすを要さば即ち活かす。
殺々三昧、活々三昧也というのは、活かそうとも、殺そうとも、
すべて思い通り、自由自在にできるということです。

是非を見ずして能く是非を見、分別を作さずして能く分別を作すとは、
兵法の上で是か非かを見ないで、よく是非を見る、分別せずに、よく分別するということです。

たとえていえば、ここに一枚の鏡を置いたとします。
すると、その前に置いたものは、どんな物でも、それぞれの形が映り、鏡を見れば、それぞれに見えます。
しかし鏡には心はありませんから、物の形はそれぞれ映しているものの、
別に、これは丸い物だから丸くとか、四角いから四角に映そうと考え分けているわけではないということです。

兵法を使う人も、一心に立ち向かえば、別に、これはいいとか悪いとかを考え分けようなどという気持ちは
起こりもしませんが、迷いがないために、よしあしを見ることもなく、考えることもないのに、よくわかるのです。

水を踏むに地の如く、地を踏む水の如しという意味は、人間というものの本性を明確に知った人でなければわかりますまい。

愚かなものは、水の上を歩いて地の上を歩くようだとすれば、土地の上を歩いていても落ちてしまうでありましょう。
地の上を歩くのに水の上のようなら、水を踏んでも歩いていけると思うかもしれません。
ですから、このことは、地であるとか水であるとか、そんなことをすっかり忘れることのできた人だけが、
初めてこの道理を自分のものにすることができるのです。

若し此の自由を得れば、尽く大地人、他に如何ともせずというのは、このように自由自在に振る舞うことのできる所に到達した兵法者に対しては、総ての人々が集まって、何とかしようとしても、どうしようもあるまいということです。

悉く同侶を絶すとは、世界に並ぶ者はないということで、いわゆる天上天下、唯我独尊ということであります。


不動智神妙録 (現代人の古典シリーズ 7)

兵法を使う人も、一心に立ち向かえば、別に、これはいいとか悪いとかを考え分けようなどという気持ちは起こりもしませんが、迷いがないために、よしあしを見ることもなく、考えることもないのに、よくわかるのです。

「良い」「悪い」「好き」「嫌い」「正しい」「正しくない」
これらは、余念があるために発生するもので、物事を見誤らせることがあります。
しかし、達人でもないのにこれらの判断を欠くと、道を踏み外すことでしょう。

私たちにできることは、一日も早く、これらの感情抜きで正確に物事を捉えることを身につけることです。

愚かなものは、水の上を歩いて地の上を歩くようだとすれば、土地の上を歩いていても落ちてしまうでありましょう。
地の上を歩くのに水の上のようなら、水を踏んでも歩いていけると思うかもしれません。
・・・地であるとか水であるとか、そんなことをすっかり忘れることのできた人だけが、初めてこの道理を自分のものにすることができるのです。


今歩いている場所は今歩いている場所。
今思っていることの理由は、今思っているから。
今行動したことは、体が自然に動いたから。

こうした中で、その理由を探ろうとした時点で、足を踏み外してしまうのかもしれません。

「今」は「今」
「どうした」から「どうした」ではないのです。

この境地になると、何か起きた場合の第一声に「言い訳」は存在しません。

自由自在に振る舞うことのできる所に到達した兵法者に対しては、総ての人々が集まって、何とかしようとしても、どうしようもあるまいということです。

感じたままに振る舞うことで、理にかなった判断をしているところまで到達するには、技術習得だけではなく、心の鋭さや平衡感覚を磨き、己の体と心が一体になり、かつ、相手の心と体とも同化できるレベルになることが必要なのかもしれません。
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tag : 不動智神妙録 沢庵宗彭 兵法の達人

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