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忠恕 中庸より

(そこで、)忠恕が道にいたる大切なこととなる。
忠恕とは、あるものごとを自分の身に経験してみて願わしくなかったなら、
他人に対してもそのものごとを仕向けるな、ということである。
(これは、まことに身近で行いやすいことである。)

(だが、孔子でさえもいっておられる、)「君子の行うべき道は四つある。
だが、わたくし丘は、そのうちの一つさえも行ないえていない。

第一に、わたくしが子に対してかくあってほしいと望むところ、
それをもってわたくし自身が父におつかえすることは、まだ十分にできていない。

第二に、わたくしが臣下に対してかくあってほしいと望むところ、
それをもってわたくし自身が君主におつかえすることは、まだ十分にできていない。

第三に、わたくしが弟に対してかくあってほしいと望むところ、
それをもってわたくし自身が兄につかえることは、まだ十分にできていない。
わたくしが友人に対して望むところ、それをわたくし自身が先に友人に対して行うことは、
まだ十分にできていない」と。

忠恕はたやすい実践の方法ではあるけれども、それを完全に実践することは、
孔子のような聖人でさえも及びがたいとされることであって、たえざる努力を要するのである。)

(されば、人々は、)自分自身に対しても、他人に対しても、常に一定の徳をば行ない、
まことのあることばを謹み守らなければならない。
自分から反省して足りないところがあれば、努力せずにはおかないし、
他人よりも余力があれば、自制して他人をしのがないようにする。
そして、ものごとを言い出そうとすれば、そのことを実行しおおせるか否かをよく考え、
また、ものごとを実行しようとすれば、それが正しい考えに合っているかどうかをおもんぱかって、
言と行との一致ににつとめる。
このようであるから、君子であろうと志すものは、常におそれつつしんで身を修めずにはいられないのである。


新釈漢文大系〈2〉大学・中庸

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tag : 人間学 中庸 忠恕

強 中庸より

(孔子が顔淵の力行を賛嘆されるのを聞いて、平生勇気を自負している)子路は「(それならば、)強いということはどういうことですか」と問いかけた。
孔子はまず、「お前の問うているのは、南方の強のことなのか、北方の強のことなのか、それともまたお前の考えている強のことなのか。

さて、普通の人にはひろい心やりのおだやかな態度で教えみちびくようにし、道にはずれた行いで立ち向かってくるものには、節度を守って報復することはしない。
これが南方の強というものである。
君子はこの強によって行う。

これに対して、戦闘を自分の任務とし、一身の死をも辞さないというのが、北方の強である。
おまえの考えている強者がこれによって行うのである。
(といって、子路の血気を抑え、つぎに)(それだから君子の強によって、)君子は心ひろくおだやかでよく人々と和合するのであって、自分の守りを失って人々の意見に押し流されることがない。
この強さこそまことの強さであるぞ。

(つまり)、中央にすっくと立って傾かないように、(自分から毅然として中庸を守っている)、この強さこそまことの強さであるぞ。
されば、国に道が行われて、(人々が富み栄えている時も、自分の利益や名誉にあこがれて、)平生の深く期する思いをかえるというようなことはしない。
この強さこそまことの強さであるぞ。また国に道が行われず、(貧乏や苦難やに一身がせめさいなまれる時でも、浅はかな心をおこさず、平生の深く期する思いを)死ぬ時まで守りぬいてかえない。この強さこそまことの強さであるぞ」といって、さとされた。

(そして、さらにことばを続けて、)孔子は、「(世上の知者のようにさかしらだって)なみなみの人には知れない道理をさぐり出したり、(世上の賢者のように)人には行いがたい甚だ風変わりなことをしたりするのは、後の世になっても、それをほめそやして、ひきつぐかも知れないが、わたくしはそんなことをしない。

君子というものは常に道を守って行動するのである。
(たとい、力が足らず、)途中でたおれようとも、わたくしは道を守ってやめることができない。
君子というものは常に中庸をよりどころにするのである。
(中庸をよりどころにしながら、)たとい世間から身をかくして、人々に知られないということがあっても、人をとがめず運命をうらまずに、(中庸を全うして)いるのは、ただ聖者だけが行うことができる。
(わたくしもその聖者を学ぼうとしているのである」と、その毅然として不動の志を明らかにされたのである)。


新釈漢文大系〈2〉大学・中庸

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tag : 中庸 孔子 子路 人間学

【瓠洲独言】 本業に誠実な人々

最近出会う方々を通じて感じているのは、「本業に誠実」ということだ。
そうした姿勢を拝見すると感動を覚える。
その真逆で、本業をおろそかにしながら、他力を求める人間の姿も見てきたからかもしれない。

本業に誠実な方の特徴として、一つの事を極めようと努力を重ねられていること。
また、自分の仕事を提供する相手、協力関係を結ぶ相手を見極めている。
場合によっては偏屈にも見えてしまうが、偏屈と観る人は、相手を自分の物指しで量るからだろう。

「そういう人」なのだから、そのまま受け入れれば良いのに。

本業に誠実だから、他のご縁のある仲間の仕事にも敬意と愛情を持つ。
そうした人々の人間関係を観ていると、本当に清々しい気持ちになる。

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